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日銀が日本円のお金を刷れば国の借金は返済できるとかいう謎理論

日本政府の1000兆円を超える膨大な負債を「日銀が日本円の紙幣を発行することで簡単に返済できる」という話があるのをご存知でしょうか?

 

こんなウルトラCが可能なら、このブログでしつこく書いている預金封鎖なんていっさい必要ないことになりますが・・・。

 

本当にこんなことが可能なんでしょうか?

 

この説の出所で一番有名なのが、財務省の麻生太郎大臣です。

麻生大臣の主張は

 

①ユーロ発行権を持たないギリシアと違って、日本は通貨発行権を自国で持っている。→国債の満期が来たら、政府が紙幣を刷って返せばいい。

 

②日本の国債は国民が政府に貸しているお金で支えられていて、外国に対する借金ではない。→だから金利は絶対に上がらない安定した国債である。

 

という内容です。

 

まず、①の通貨発行権についてみていきましょう。

 

日本国の紙幣を発行しているのは日本銀行ですから、政府が日銀をどのように活用するかが問題になるわけですが・・・。

 

 

日銀が政府を手助けする手段は限られている

 

そもそも日銀は無制限に紙幣を発行できる機関ではありません。

 

日銀が通貨発行権があると言っても、それは日本銀行法に定められた範囲でしか行うことはできません。日本政府の借金を返済したいから、などという理由では紙幣を大量に印刷することは許されないのです。

 

日銀が市場に紙幣を供給する場合、民間銀行が持っている国債を日銀が買い取る「買いオペレーション」が主な手段になります。

 

国債など何らかのものを買うという行為を通じてお金を市場に流すのが原則であり、例えば日銀職員が発行した紙幣をヘリコプターで街中にばらまいたりしたら、これは犯罪行為になります。

 

というわけで、日銀が直接「国債を返済する」という行為はできないことになります。日銀ができることは、あくまで「毎年発行される国債を民間銀行を通して買い受ける」ことであって、この時の支払いに「紙幣を刷る」わけです。

 

麻生氏が返済すればいいと言っているのは、満期が近づいた国債を別の国債を発行して返済する(借り換え国債)という行為を延々続けていけばいいじゃないかということで、全部いっぺんに返済できるという意味ではありません。

 

日本の1000兆円の借金の話をした後に、「お金を刷って返せばいい、簡単だろ」と言うから、全部簡単に返せるぐらいの勢いに聞こえるので、これが紛らわしさの元になっている気がします。

 

満期国債の返済は毎年やっているルーチンワークですが、消費者金融の借金を別の消費者金融から借金して返す行為と本質は同じなので、ドヤ顔で言う話ではないとは思うのですが。

 

それにしても、これが現役財務大臣の発言ですからね。誤解する人間が出てきてしまうので、もう少し言葉を選ぶべきだと思います。

 

 

国民のお金をあてにしすぎじゃないの?

 

もっと問題なのは②の「国民が政府に貸しているから安心」の発言です。

 

ここに、日本の政治家や官僚特有の「国民のカネは俺たちのもの」という意識が出てしまっていると思うのです。

 

日本国債が低金利なのは、日銀や民間銀行、生命保険会社が国債のほとんどを支えているからです。ゆうちょ銀行なんて世界第2位の超メガバンクですからね。

以前によく言われた「護送船団方式」の機能はいまだに健在ということです。

 

外国人が保有している日本国債は数パーセントにすぎないので、こちらのインパクトはほとんどないと言っていいでしょう。

 

その前提があって金利が安定しているのに、それを「日本国債は信頼があって安定している」という内容と同じ意味にするのは間違いです。

 

日本国債のスタンダード・アンド・プアーズによる格付けは、現在「シングルAプラス」で、これは中国や韓国以下のランクになります。

 

財務省は格付け会社の見解がおかしいと反論しているようですが、民間会社とはいえ、国際的に信頼されている機関の評価に耳を傾けない姿勢というのは対外的に印象は良くないですね。

 

将来、政府の借金膨張がひどくなって、日本国債の格付けがさらに下がるようなら、いよいよ自分の預金を銀行から下ろして、タンス預金にしたり、日本円以外のものに変えたりする日本人が増えてくるはずです。

 

それがハッキリ数字として出てきたとき、麻生大臣は同じことが言えるのでしょうか?